2023年05月12日
歯の神経(歯髄)が細菌に感染すると、何もしなくても痛みを感じるようになります。
ですがその痛む歯は、本当に感染した歯なのでしょうか。

患者さんは右側の歯が何もしなくても痛むということで来院されました。
診査の結果、右下の6番目の歯の神経が細菌に感染していることがわかり、この歯の神経を抜くことで痛みをとりました。
最終的なお薬まで詰めたので、この後は被せ物を製作して装着する予定です。

この患者さんは当初、右上の歯も痛いとおっしゃっていましたが右上に治療が必要な歯はありませんでした。
これは関連痛と呼ばれ、“神経の勘違い”が原因で起こるとされています。上の歯の感覚を脳に伝える上顎神経と下の歯の感覚を脳に伝える下顎神経は、三叉神経として合流し脳に痛みなどの感覚を伝えます。上下の歯の感覚が最終的には同じ神経を通るので脳が勘違いを起こすのですね。
このように、口の中で起こる痛みのきっかけはたった1本の歯であることも珍しくありません。
早めの受診と定期検診で健康なお口を手に入れましょう。
2022年11月18日
この症例は”右下の奥歯の歯茎が腫れた”を主訴に来院された患者さんです。

レントゲンを撮影すると右下の一番奥歯が膿んでいるためまずは保険治療内で根管治療を行いました。
しかし膿が大きく歯の根っこが一部吸収されてしまっていたため、材料の一部が漏れ出してしまいこれでは予後が悪い状態です。

腫れは一時的に引いたもののまだ定期的に腫れてしまう状態でした。
この場合次の手段として、マイクロスコープを使用した保険外の根管治療か一度その歯を抜歯して悪い部分を取り除きもう一度歯をもどす意図的再植という治療法を患者さんに提示しました。
意図的再植は保険内で可能です。
患者さんと相談の末、意図的再植を行う事となりました。
一度抜歯して骨の中の膿を取り除き、歯の根っこの悪い部分を取り除き材料で蓋をして元の位置に戻します。



こちら↓が再植直後のレントゲンと半年後のレントゲンです。

再植直後

半年後
再植後の歯は糸で縫って固定するため抜糸するまでは違和感が強かったようですがその後は違和感もなく痛みもなかったとのことです。
レントゲン上ではまだ膿は消退途中ではありますが、歯茎が腫れることはなくなりました。
もし、「根管治療では治せない」「保険の治療では治せない」と診断された歯があれば他にもこのような治療法がある可能性があるので一度相談してみてください。
※歯が単根で容易に抜歯できるなど意図的再植を行うことができる症例には制限があります。
2022年04月8日
40代女性の患者様です。
平成30年10月に右下の痛みを主訴にご来院されました。
当時のレントゲン写真です↓

右下の親知らずの隣の歯が虫歯が進行し、歯の神経の方まで進んでしまっていたので、その日は麻酔を行い歯の神経を取る治療に入りました。
その後平成31年2月に治療の続きでご来院され、7月には歯の神経が入っている根管の長さを測るための器具を入れたレントゲンのお写真まで取る所まで治療が進みました。
その時のレントゲンのお写真です↓

そこから約1年経った令和2年6月に治療の続きを希望されご来院されました。
前回の治療からかなりあいてしまっていたので、前回来院された時には虫歯になってはいなかった歯の部分が虫歯になってしまっており、歯を残すことができないような状態に悪化してしまっていました。
その時のレントゲン写真です↓

1年前のレントゲン写真と比べると赤い矢印のところあたりから広範囲にかけて黒くなってしまっているのがわかります。
約1年治療をせずに放置された状態により虫歯になってしまっていました。
ここまで虫歯になってしまっている歯の部分が増えてしまうと、歯を残すことはできないとお話しましたが、
患者様は歯を抜いてしまうことはできるだけしたくないということで、そのままの状態で帰られました。
その後令和3年12月に残すことができないですと前回お話していた歯が痛みだしたということでご来院され、その日に歯を抜く治療をすることになりました。
その時のレントゲン写真です↓

歯が虫歯でほとんど残っていないことがわかります。
定期的に通って下さっていればこのように残すことができた歯を抜かなければいけないような状態にまで悪化することはなかったでしょう。
治療は継続して通院していただくことが非常に大事になってきます。
治療について流れや通院期間などご不明点がありましたらお気軽にご相談ください。
2022年01月28日
マイクロスコープを使った精密根管治療で、昔に根管治療した際のファイル(治療器具)除去をします。

舌側根管に長いファイルが入っています(矢印部分)

顕微鏡治療時の写真、光を反射しているとことが金属製のファイルです(矢印部分)
マイクロスコープで確認しつつ、器具を除去してみると…

約7㎜ほどの器具が入っていました。

その後ファイルが入っていたところの感染物を取り除き、治療終了です。
顕微鏡を使うことで今まで裸眼では見ることができなかった世界が見えるようになりました。
マイクロスコープを使った根管治療をご希望の方は一度ご相談ください。
治療回数…3回
【治療費用】
CT撮影 16,500円(税込)
根管治療 165,000円(税込)
ファイル除去 33,000円(税込)
2021年11月12日
初診来院時

こちらの患者さんは、左下緑矢印の歯を他院で3年根管治療を続けているが違和感が消えないということで来院されました。
この歯が今どんな状態なのか?残すことが出来るのか?診断をするために歯科用CT撮影を行いました。

CTを撮って確認したところ、根尖病巣(根っこの先に炎症や膿がある状態)はなさそうだったので保存可能と判断し、患者さんの希望もありマイクロスコープを使った根管治療を開始することになりました。
治療の際、ラバーダム(歯だけを露出させて唾液などから守りながら治療ができるゴム製のマスクのようなもの)を使用するのですが現状の歯では歯茎の上に出ている部分が少なすぎてラバーをかけるための器具を固定することができません。

そのため樹脂で歯の周りにぐるりと壁を作り、ラバーダムを付けて治療が行えるようにしました。
マイクロスコープでしっかりと「見て確認をしながら」根管内の汚れ等を除去。


1度の治療で違和感が消失したため、2回目の治療で根管充填を行いました。
【費用と回数】
来院一回目 相談とCT撮影 (税込)16,500円
来院二回目 マイクロスコープ根管治療・小臼歯 (税込)55,000円
来院三回目 マイクロスコープ根充・小臼歯 (税込)33,000円
2021年07月23日
患者様は50代男性
下の銀歯のブリッジが気になり、綺麗な白い歯にしたいとのことでした。

術前
ブリッジは歯が欠損している両隣在歯に被せ物をし、欠損部のダミーの歯とひとかたまりの修復物を装着し、両隣の歯に欠損歯の分の噛み合わせる力を負担させる治療法です。
後ろの歯は神経があったのでそのまま削り、手前の歯は神経が既に無い歯だったので、神経の再治療を行い、新たな土台を建てました。

セラミック治療の一つ、ジルコニアという奥歯の噛み合わせの力にも耐えられる素材で一塊のブリッジを作り装着しました。

セラミックの表面は非常に滑沢で、見た目だけでなく、歯垢が付着しにくく、普段のブラッシングでの歯垢の除去もしやすく、歯と歯茎にも望ましい状態を保ち易いです。
また、歯としっかり接着することができるので、被せ物の下から2次むし歯を作る可能性を減らすことができます。
【費用】
精密根管治療 1本¥88,000〜(税込)
歯の土台(支台築造)1本¥27,500(税込)
歯の型取り 1回¥16,500(税込)
セラミックブリッジ奥歯3本合計¥561,000(税込)※1本17万円×3本
【来院回数】
精密根管治療 3回
歯の土台1回
歯の型取り1回
ブリッジセット1回 合計6回の通院
2021年05月28日

左下(写真右側の白く詰め物がされている部分)を他院で3年根管治療を続けているが違和感が消えないというお悩みの相談にいらっしゃった患者様です。

CTを撮って確認したところ、にて根尖病巣(歯の根っこに細菌が溜まり痛みや腫れが起こる病気)は見られないため、歯を抜く必要は無く保存可能と判断しました。
患者様にマイクロスコープを使った根管治療を行うことで違和感がなくなる可能性が高い事をお伝えしたところ、当院での治療を希望されました。

元々、ほぼ根っこのみで歯の部分がほとんどなくなっている状態だったので樹脂で歯の壁を作りました。
歯の壁(隔壁)を作る事で、歯の強度を保つ目的と唾液などが根管内に入るのを防ぐ目的があります。
根っこのみの状態ですとラバーダムを付けられませんが、隔壁があることでラバーダムを使用して治療が行えるようになります。
ラバーダムを使用し、マイクロスコープ下にて根管内汚染物を除去したところ…

1度の治療で違和感がなくなったそうです。やはりマイクロスコープを使ってきちんと見ながら精密に根管治療を行うことは、手探りで行う今までの根管治療に比べると治療の精度が違います。

根管内の状態も良いため、2回目の治療で根管充填を行いました。
【来院回数】
①相談〜CTにて確認
②マイクロスコープ根管治療
③マイクロスコープ根管充填
【費用】
CT撮影 税込16,500円
隔壁 税込11,000円
感根処(小臼歯)税込110,000円
2020年12月10日
親知らずを抜くか迷われることがあるかと思います。状態によっては必ずしも抜く必要があるわけではありません。しかし、顎の小さな方が増えている現在では、親知らずが斜めから横向きに生えている方が多く、この場合、抜歯する必要が出てきます。このような親知らずだと、手前の歯が虫歯や歯周病になるリスクが非常に上がるからです。
おそらくネットの記事ではこのような記載が見受けられると思います。
親知らずや手前の歯が虫歯になってから治療すればいいのではと疑問が出るはずです。
今回、親知らずの一つ前の歯「第二大臼歯」の特徴から親知らずの抜歯の必要性をご説明します。
この第二大臼歯は、日本人の場合、約40%に樋状根といわれる奇妙な歯根の形をしています。根の断面が「C」のような形をしており、内部の神経の入り方がかなり複雑です。隣の根の形とは異なることがお分かりいただけるでしょうか。

深い虫歯で根管治療が必要になると、特に樋状根は治療成績が非常に悪く、根管治療を正確に行わないと、高確率で将来抜歯になると報告されています。
親知らずが横に生えた状態で虫歯になると、ちょうど歯の神経に一番近い部位で虫歯になるため、虫歯が小さくても根管治療が必要となる場合が多いです。

この症例は、右下の第二大臼歯が親知らずの虫歯と歯周病によって神経を伝って顎骨まで感染が広がり、右側の顔面が腫脹してしまいました(レントゲン写真で「R」と記載された方が右側です)。
もともとは大きくない虫歯にもかかわらず、歯周病、顎骨への感染、そして樋状根という最悪の状態がそろってしまったため、根管治療だけでなく、親知らずと第二大臼歯を抜歯して上の親知らずを移植する、もしくはインプラント治療治療の選択肢として挙がりました。虫歯の大きさとは比例しない大がかりな治療ですよね。
患者さまの希望で精密根管治療で歯の保存を図りました。
術中写真です。

根の中がCの形をしていることがわかります。
術後の写真です。

参考までに第一大臼歯の術後の写真を提示します。

樋状根では根の詰め物で歯が真っ白になります。違いがおわかりいただけたでしょうか。
かぶせ物と歯周病治療の治療も行っております。
半年後の経過観察で病巣が消失し、再発していないことがわかります。

樋状根の治療はマイクロスコープとラバーダム、そして専用の器具を適切に駆使すれば治癒に導くことができると考えられます(伝わりにくいですが、歯根に穴が開きやすかったり、感染の取り残しが出やすいため、ドクター泣かせの歯です・・・)。
そもそも、抜く必要性のある親知らずを放置しなければ、このような治療は不要になるわけです。
親知らず・・・大事になる前に抜歯をしませんか?
親知らずで悩まれている方は抜歯の必要性について一度ご相談ください。また、親知らずの虫歯が原因で第二大臼歯の根管治療が必要になった場合もご相談ください。
親知らずの抜歯
料金:保険適応内
治療期間:2~3回、必要に応じて経過観察を追加
精密根管治療(マイクロエンド,抜髄)
料金:150,000~円
治療期間:治療2~回+経過観察2~3回
2020年05月29日
「神経ギリギリでした…痛みが出たら神経とりますね」「虫歯が深く、中で広がっていたので次回神経とりますね」・・・というようなことを虫歯治療の際に言われた事がある方もいらっしゃるかと思います。
深い虫歯の場合、歯の神経(歯髄)まで感染が及び、歯髄が壊死することがあります。
「歯の神経が死んだ」なんて表現をされますよね。
従来の治療(保険診療)では、歯髄の露出(露髄)や歯髄に及ぶ感染があった場合、歯の中の神経を可及的に除去し、生体為害性のない物質で充填することがほとんどです。しかし、歯の解剖学的複雑さから、その治療は100%成功するわけではありません。歯髄がないため、再感染や歯の破折のリスクが高まり、将来的に抜歯に至る場合があります。
そのため、歯を生涯大切にするには歯髄をどれだけ残せるかが重要となります。
当院では,虫歯治療の際に歯科用顕微鏡を用いることで,神経のどの部分まで感染が及び,神経をどの程度除去する必要があるかということ調べ治療します。これをVital pulp therapy(バイタルパルプセラピー=歯髄温存療法)といいます。
Vital pulp therapyを行った2症例を提示いたします。
症例1
左下大臼歯の冷水痛を主訴に来院された患者さまです。
前医による治療後から症状が出現したそうです。
歯科用顕微鏡にて観察すると歯の神経が壊死していました。

歯のくびれた部位(歯頚部)で神経を除去するのが通法ですが、今回はその部位では生きた歯髄と壊死した歯髄が混在していましたので、通常より深い位置で神経を切断しております。

処置後、一時的に熱いものがしみる症状が出ましたが、徐々に落ち着き、症状は消失しました。術前のレントゲン写真では歯根の周囲に影(炎症や感染などの際に出現します)がありましたが

これが約3か月後には消失しております。

症例2
右下第2大臼歯の虫歯の治療で来院された患者さまです。特に症状はありませんでした。
歯科用顕微鏡にて観察すると一方の歯髄が壊死し、もう一方は壊死部位の混在した歯髄でした。

これは不可逆性歯髄炎という診断になります。神経の壊死範囲が大きく、神経は残せないことがわかりました。
この後、根管治療となりました。
Vital pulp therapyの成否は歯髄の感染の状況によるため、必ず成功するとは限りません。
しかし、歯科用顕微鏡を用いることで、現状を正確に把握することができます。
「その神経は残せませんか??」
当院では歯を大切にしたいという気持ちを大切にします。神経をとる前にご相談ください。
Vital pulp therapy(神経温存療法)
料金:50,000円(顕微鏡での診断のみ:円)
治療期間:治療1回+経過観察2~3回
※バイタルパルプセピーをおこなっても、神経を取らなければいけなくなることがあります。その場合、根管治療が必要になったり、神経障害性疼痛の出現が予想されます。その際には適切に診断・治療いたします。