「その神経は残せませんか?」 ~Vital pulp therapy~
2020年05月29日
「神経ギリギリでした…痛みが出たら神経とりますね」「虫歯が深く、中で広がっていたので次回神経とりますね」・・・というようなことを虫歯治療の際に言われた事がある方もいらっしゃるかと思います。
深い虫歯の場合、歯の神経(歯髄)まで感染が及び、歯髄が壊死することがあります。
「歯の神経が死んだ」なんて表現をされますよね。
従来の治療(保険診療)では、歯髄の露出(露髄)や歯髄に及ぶ感染があった場合、歯の中の神経を可及的に除去し、生体為害性のない物質で充填することがほとんどです。しかし、歯の解剖学的複雑さから、その治療は100%成功するわけではありません。歯髄がないため、再感染や歯の破折のリスクが高まり、将来的に抜歯に至る場合があります。
そのため、歯を生涯大切にするには歯髄をどれだけ残せるかが重要となります。
当院では,虫歯治療の際に歯科用顕微鏡を用いることで,神経のどの部分まで感染が及び,神経をどの程度除去する必要があるかということ調べ治療します。これをVital pulp therapy(バイタルパルプセラピー=歯髄温存療法)といいます。
Vital pulp therapyを行った2症例を提示いたします。
症例1
左下大臼歯の冷水痛を主訴に来院された患者さまです。
前医による治療後から症状が出現したそうです。
歯科用顕微鏡にて観察すると歯の神経が壊死していました。
歯のくびれた部位(歯頚部)で神経を除去するのが通法ですが、今回はその部位では生きた歯髄と壊死した歯髄が混在していましたので、通常より深い位置で神経を切断しております。
処置後、一時的に熱いものがしみる症状が出ましたが、徐々に落ち着き、症状は消失しました。術前のレントゲン写真では歯根の周囲に影(炎症や感染などの際に出現します)がありましたが
これが約3か月後には消失しております。
症例2
右下第2大臼歯の虫歯の治療で来院された患者さまです。特に症状はありませんでした。
歯科用顕微鏡にて観察すると一方の歯髄が壊死し、もう一方は壊死部位の混在した歯髄でした。
これは不可逆性歯髄炎という診断になります。神経の壊死範囲が大きく、神経は残せないことがわかりました。
この後、根管治療となりました。
Vital pulp therapyの成否は歯髄の感染の状況によるため、必ず成功するとは限りません。
しかし、歯科用顕微鏡を用いることで、現状を正確に把握することができます。
「その神経は残せませんか??」
当院では歯を大切にしたいという気持ちを大切にします。神経をとる前にご相談ください。
Vital pulp therapy(神経温存療法)
料金:50,000円(顕微鏡での診断のみ:円)
治療期間:治療1回+経過観察2~3回
※バイタルパルプセピーをおこなっても、神経を取らなければいけなくなることがあります。その場合、根管治療が必要になったり、神経障害性疼痛の出現が予想されます。その際には適切に診断・治療いたします。